蒸気の基礎知識

「蒸気」とは、物質が液体から蒸発、あるいは固体から昇華して気体状態になったもので、一般的には水蒸気のことを指します。水蒸気は水が蒸発した無色透明の気体で、お湯を沸かす際にやかんの注ぎ口から見える白い気体は、水蒸気が周囲の空気によって冷やされて、凝縮した水の微粒子です。

蒸気の用途

 蒸気は様々な産業で使われており、私たちの暮らしや産業活動の中で欠かせないエネルギーです。産業革命時代、蒸気は主に熱動力として、蒸気機関車や蒸気船、機織りなどの動力源に使用されてきましたが、近年では、電力等に置き換わり、動力源としての蒸気はあまり見られなくなりました。しかで現在では、動力源から食生活や日常生活へと活躍の場所を広げ、多種多様な熱の需要に対し、いろいろな形で活かされています。

蒸気の基礎知識_図1_蒸気の用途

飽和蒸気・過熱蒸気

飽和蒸気

 飽和蒸気とは、ある一定の温度・圧力にて飽和した状態の蒸気で、最も身近な蒸気です。100℃~200℃の加熱を行うための熱源としては、非常に広く使用されています。

過熱蒸気

 過熱蒸気とは、飽和蒸気を更に加熱(スーパーヒート)した蒸気です。

動力として使われることが多く、常圧で高温化でき、熱風と比べて乾燥能力が非常に高いです。また、水の分子しか存在しない低酸素状態の気体であるため、被加熱物が酸化せず、火災や爆発の危険も低いことから、食品業界・医療業界等で注目をされています。

なぜ蒸気は利用されるのか

温度制御が容易

 飽和蒸気の圧力と温度はお互いに関連しています。それにより下図のように、温度が決まれば圧力が、圧力が決まれば温度が決まるため、いずれかの調整により、温度と圧力の調整により、容易に目的の圧力や温度にすることができます。

蒸気の基礎知識_図2_水の蒸気圧

均一な加熱が可能

 蒸気は熱伝達に優れています。均一な温度で機器内に充満し、一定の温度で凝縮・熱伝達するため、電気やガスなどに比べ、伝熱面における温度ムラはありません。また、その伝熱性の高さから必要とされる伝熱面積が小さくなり、装置の小型化が可能になります。

輸送が容易

 蒸気はラインの圧力低下に従い流れるので、熱の移送のためにポンプや送風機、コンプレッサを必要としません。高圧で移送すれば比較的小口径の配管で済み、使用ポイントで減圧して使用できます。そのため一般的に蒸気の発生・分配・ドレン回収システムの施工/運用コストは、他の熱媒体と比較して割安となります。

クリーン

元が水のため、漏洩しても環境的なリスクが少ないです。

効率的なエネルギー媒体

蒸気は、効率的なエネルギー媒体であり、同じ質量の水に比べ5~6倍のエネルギーを保有できます

蒸気の基礎知識_図3_効率的なエネルギー媒体

潜熱について

潜熱とは、物質の相が変化する時に必要とされるエネルギーの総量のことです。

例)0℃の氷 (固体)+熱エネルギー ⇒ 0℃の水 (液体)
  ⇒融解潜熱、融解熱

  100℃の水 (液体)+熱エネルギー ⇒ 100℃の蒸気 (気体)
  ⇒蒸発潜熱、気化熱

 潜熱 : 温度変化を伴わずに授受される熱
 顕熱 : 温度変化を伴って授受される熱

蒸気潜熱を利用したもの

①ジャケット加熱等の熱源全般
 ⇒蒸気を凝縮させることで他へ熱を与える

②クーリングタワー・打ち水・クーラー・湿度計など
 ⇒水を強制的に蒸発させることで他から熱を奪う

融解潜熱を利用したもの

・氷を使用するもの全般
 ⇒氷が冷たいから冷えるだけでなく、融解することで更に熱を奪う

蒸気の基礎知識_図4_H2Oの比エンタルピー推移

蒸気の質

 蒸気の効率を考える上で「蒸気の質」は重要です。蒸気にもベタベタの湿り状態から、カラカラの乾き状態まで色々あり、その度合いを“乾き度”または“湿り度”で表現します。質の良い蒸気は乾き度が高く(湿り度が低い)、質の悪い蒸気は乾き度が低い(湿り度が高い)ということになります。

・乾き度・・・蒸気全体から水を差し引いた蒸気の質量割合

・湿り度・・・蒸気全体に含まれる水の質量割合

質の悪い蒸気、つまり蒸気の乾き度が低いと、発生する障害

・ユーザ側への不純物混入 (食品では致命的)
・エロージョンによる配管・容器の破損
・加熱能力の低下(総熱量減少、熱伝達率低下)

 例) 0.5MPaG,100kg/hの蒸気を300℃の過熱蒸気にしたい・・・
     条件1 乾き度1(100%)の時 = 8.5 kW
     条件2 乾き度0.95(95%)の時 = 11.4 kW  (34%↑)

どんな時に蒸気の乾き度は低下するのか?

 ・ 気水分離不足 
 ・ プライミング(突沸) 急激な圧力低下
 ・ フォーミング(泡立ち) 過濃縮
 ・ 保温施工不良、保温材劣化
 ・ スチームトラップ不足、設置場所が不適切

乾き度低下の対策

① キャリーオーバーや放熱分をあらかじめ加味し、ラインヒータを設置する。

② あらかじめ高圧の蒸気を生成し、減圧弁を設置する。
 ・一次側の圧力変動に対し、二次側の圧力が安定します。
 ・減圧したことで発生する余剰熱により、蒸気に含まれる水分が気化し乾き度が上昇します。

無料ダウンロード資料「蒸気の基礎知識」

蒸気の基礎知識の内容を印刷用の資料としてご用意しました。ぜひご活用ください。
・蒸気とは?
・蒸気の用途
・飽和蒸気・過熱蒸気
・潜熱について
・蒸気の質とは

その他の記事

日本電熱のボイラー製品のご案内

高い要求に対し経験と技術で最適なボイラーを提案します。様々な問題点に対して取り扱う製品を基に既製品にはないオーダーメイドの製品も制作することが可能です。